木曽の森林鉄道

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もう30年前になるんやなぁ。

パパが中学生だったころ、長野県の山奥の木曽というところに「森林鉄道」があった。
NHKの「新日本紀行」というテレビ番組で、おもちゃのような列車が渓谷にかかった鉄橋をとことこと渡っているのを見て、パパはがまんできなくなり、冬休み、春休み、夏休み、さらには学校をずる休みして、夜行列車で森林鉄道を見に行った。


「新日本紀行」でも紹介された
通学列車「やまばと号」(田島)

はじめて森林鉄道に着いたのは12月の小雨の朝。霧のかかった停車場に止まっている赤い木造の客車。だだっぴろい貯木場には、ごちゃごちゃした茶色い運材台車が並んでいた。手で押したら回ってしまうレコードみたいな転車台、信じられないような急カーブで坂を降りていく引込み線、幅の狭い森林鉄道と国鉄の軌道が一緒になってレールが3本ある併用軌道、そして木曽川にかかる不釣合いに立派な大鉄橋。みんな昨日のことみたい。

小雨に濡れるB型客車
(上松)


貯木場と停車場との間は
道路と並走していた(上松)


上松貯木場
奥の架線柱が国鉄上松駅


鉄板製(?)の小さな転車台
(上松)


国鉄と林鉄の併用軌道
(上松)


大正2年に作られた鬼淵鉄橋
(上松-鬼淵)


本線が廃止された後、組立式ミニサイクルに乗ってさらに山奥に入り、まだ動いていた支線を探検した。
軌道上を歩いていくと、ずんぐりむっくりした黒っぽい生き物が。熊かと思ってびびったけど、ニホンカモシカだった。軌道は、真昼でも日の当たらない深い峡谷を登っていく。遥か眼下を流れる川面を見ながら手すりのない鉄橋を渡るときはドキドキしたなあ。
終点に近づくと視界が開けてきたが、そこは見渡す限り木を切り出した後のはげ山だった。そして、木で組んだ足場に乗っかった軌道が、スパイラルプールみたいにぐにゃぐにゃと複雑にまがりくねりながら、さらに山奥へと続いていた。


「八丁闇」と呼ばれる峡谷をゆく
うぐい川線

 助六停車場からΩループで高度をかせぎながら山奥に
 延びていく作業軌道(助六)

それからパパは大人になって、いろんなことに夢中になるうちに、いつか森林鉄道のことを忘れてしまった。
ひゆいがだんだん大きくなり、鉄道が好きになってきて、パパも森林鉄道に行ったときのことを思い出すようになった。
ゆっくりとした時間の流れが、また戻ってきた。

(2004年9月記)




森 林 鉄 道 訪 問 記




第1話
末期の王滝線





第2話
うぐい川線は動いていた!





第3話
助六へ(その1)





第4話
助六へ(その2)





第5話
助六へ(その3)





第6話
再び助六へ





第7話
初めての搭乗





第8話
最後の運材列車





第9話
うぐい川線の終焉





第10話
廃線跡を訪ねて




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